「志音くん、ありがとう。それじゃあ。帰るね」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよー。家に帰るくらいできるよ!」

 あまりにも心配そうにするので、わざとらしくにかっと笑ってみせた。

 保健室を出ると、ある場所へと向かった。


 昇降口の目の前に大きなゴミ箱がおいてあり、教室などのゴミを捨てる場所となっている。
 
 わたしは大きなゴミ箱を目の前にして立ち止まる。

 

 ……ごめんね。
 本当はこんなことしたくない。
 だけど、怖くて仕方ないんだ。

 心の中で何度も謝った。
 そして。

 ゴミ箱にましゅちゃんを投げ捨てた。
 手のひらからましゅちゃんが消えると、一気に罪悪感がおしよせる。

 
 わたしは、なんてひどいことをしているんだろう。
 すぐに後悔した。

 でも、怖くて仕方がないのも本当なんだ。

 ゴミ箱に捨てられたましゅちゃんの瞳と目があったような気がした。
 途端に、どくんと心臓がなる。

「ごめんね……」

 ぽつりとつぶやいて、わたしはその場から逃げるように走った。

 大切にしてきたましゅちゃん。
 小学生、中学生になっても、捨てられなかったましゅちゃん。

 なのに……わたしはごみ箱に投げ入れたんだ。