また怖い夢を見るのが怖くて、なかなか寝付けなかった。
 あんなに不気味な夢は、もうこりごりだよ……。

 朝になり、寝不足の体をゆっくり起こす。

 まただ。ずんと肩が重い。
 筋肉痛ってこんなに痛いのかな。

 なにかがのしかかったような肩を回す。

 
 
「ましゅちゃん、学校行ってくるから待っててね」

 勉強机に座るましゅちゃんに話かけてから家を出た。
 
 昨日の夢のことは気になってはいたけれど。
 気にしないようにしたんだ。
 だって考えれば考えるほど、怖くなっちゃうんだもん。
 
 夢のことは忘れて、いつも通りにホームルームが始まるまでの時間。
 葉月ちゃんと志音くんと過ごしていた。

「今日は肩重くないの?」
「あれ、そういえば……今日は全然痛くも重くもない」

 葉月ちゃんに言われて気づいた。

 今日のわたしはだいぶ調子がいい。
 元気よく両手を掲げてみせた。

 自然と笑顔になる。
 よかった。あんな夢を見た後だったから、余計に安心したんだ。

「よかったねー。なにか憑いてるんじゃないかって心配してたんだよ?」
「え……なにかって?」
「だって、特に運動で肩を使ってるわけじゃないのに、ずっと肩痛いなんておかしいでしょ?だから……」

 葉月ちゃんは、わたしの肩を指差す。
 そして。

「憑いてるんじゃないかなーって」

 わたしはドキリとする。

「つ、憑いてるって……やめてよ。もう……」
「ごめんごめん。冗談だよー」

 葉月ちゃんがへらりと笑うので、わたしも無理やり笑顔をつくる。

 もう、ヤダヤダ。
 オカルト好きな葉月ちゃんは、すぐ心霊現象のせいにしようとするんだから…!

 憑いてるだなんて、そんなはずないよ。
 今までだって幽霊なんて見えたことないんだから。

 鳴りやまない心臓の音を落ち着かせるように、自分に言い聞かせた。