お父さんは仕事でいなかったし。
 わたしでも、お母さんでもなければ、いったい誰がましゅちゃんをここにおいたんだろう。
 

 ましゅちゃんが、ここにいる理由を探すと、どきりと胸がざわついた。
 ゆっくり振りかえって、ましゅちゃんを見つめる。

 リビングテーブルの上に座るましゅちゃん。
 じっと動かずそこにいるだけ。
 動かないましゅちゃんを見て、なんだかほっとする。


 ま、まさかね…。
 ましゅちゃんが自分で出てこれるわけないもん。人形なんだから。

 
 
 いつも通りリビングで夜ご飯を食べた後、わたしはましゅちゃんを自分の部屋に連れていくことにした。
 

「ましゅちゃん、懐かしいなー」

 なんだかましゅちゃんを見ていると、心がぽわんとあたたかくなった。
 子供のころは、こうやってよく話しかけてたなあ。

「ねえ、ましゅちゃん、どうやって出てきたの?」
 
「……」

 なーんてね。
 ましゅちゃんからの返答はない。人形だから当然なんだけど。

 わたしは、ましゅちゃんを押し入れにしまわなかった。
 その代わりに勉強机の上に座らせることにする。