「あの時の友達は、ましゅちゃんだけだったなあ」

 小学生になってもうまく友達を作れなかったわたしは、放課後家に帰るとすぐにましゅちゃんにお話をしていた。

 今日学校でこんなことがあったんだよ。
 先生に注意されちゃった。

 まるで友達に話すように、わたしは毎日ましゅちゃんに話かけていた。

 



「ただいまー」

 ましゅちゃんと過ごした日々を懐かしんでいると、お母さんが仕事から帰ってきた。

「あら。その人形、懐かしいわね」

 どうやらお母さんも覚えていたようで、すぐに気づく。
  
「うん。懐かしいよね。お母さんありがとう。出してくれたんでしょ?」
「え? お母さんじゃないわよ?」

 不思議そうな顔をして首をかしげた。
 

 え…!
 てっきりお母さんがましゅちゃんをここに置いたと思っていた。
 いったいどうなってるの!?
 

 だって、絶対におかしいんだ。
 わたしが大きくなるにつれて、ましゅちゃんと過ごす時間は減っていた。
 そして小学校高学年になるころには、押し入れの中にしまっていたんだ。