「もう、わたしが怖い話苦手って知ってるくせに……」
「でも、人形って魂がやどるっていうよね!」

 わたしの話なんて聞いてないみたい。
 そう言って、葉月ちゃんは目を輝かせる。
 これは話題を変えないと、話が止まらなくなるパターンだ!

「葉月ちゃん、怖い話はやめようよ……。ねっ!休日はどこに出かけたの?」

 ホラー話が好きな葉月ちゃんは、一度話し出すと止まらなくなる。
 わたしは怖い話が苦手なので、無理やり話題を変えてみた。

「陽菜は怖がりだもんねー」
「そうだぞ。陽菜は誰よりも怖がりなんだからやめてやれよ!」

 わたしの心の声を代わりに言ってくれたのは、その場にいたもう一人の友達。
 短髪で日焼けをした男の子、志音くん。

 ありがとう。という気持ちを込めて、うんうんと相槌をうつ。



 
「陽菜は休みの日、どこかでかけた?」
「わたしはね、お父さんと隣町の川で釣りしてきたよ」
「えー。珍しい! おじさんに釣りに誘われてもいつも断ってたじゃん」

 志音くんは驚いたように目を丸くした。

 彼の言う通りでお父さんは釣りが大好き。
 わたしもなにかと誘われていたけど。
 釣りに興味がなかったのでいつも断っていたんだ。
 

「本当は乗り気じゃなかったんだけど、たまにはいいかなって」
「へえ。楽しかった?」
「うん。なんかわたしよりお父さんの方が楽しそうにしてたけどね」

 休日はどこに遊びに行ったとか、何して過ごしたとか。
 そんなことを話す休み明けの月曜日。
 いつもの光景。いつも通りの一日がはじまるはずだったのだけれど……。