「今宵のあそびは……鬼ごっこをしようと思うんだ」

 戸惑うわたしたちをよそに、アリアさんはくるりとたのしげに回る。
 
「ちょ、ちょっと待ってよ!いきなり夜の学校で、幽霊が現れて……鬼ごっこって言われても」

 その通りだと思った。
 こんな状況受け入れろと言われても、出来そうにないよ。

 混乱するわたしたちに、アリアさんは続ける。

「そんなことアリアは知らないよ!ただあそびたいだけだもん!クスクス……」

 アリアさんはこっちの都合なんてお構いなしらしい。
 そりゃそうだよね。
 幽霊が人の気持ちを考えるわけないもの。

 優斗くんと梨々花ちゃんも、顔をしかめて混乱してるように見えた。
 もちろん、わたしも混乱してる。


 だけど、アリアさんは待ってはくれない――。

 
「さぁ、はじめるよ!」

 ニタリと笑った
 その笑顔にゾッとする。


「ま、待ってくれ! 梨々花は今日階段から転んで怪我したんだ。鬼ごっこなんて無理だ」

 どきり、胸が痛い。それはわたしのせいだから。

「それは、君がおんぶや抱っこすればいいんじゃない?ねっ!それは面白いー!」

 アリアさんはケタケタと笑いだす。
 
 そんな無茶苦茶だよ……。
 同級生をおんぶや抱っこしたまま、鬼ごっこをするだなんて。


 梨々花ちゃんは覚悟をきめたようにうなづく。
 そして優斗くんに伝えた。
 
「優斗! 私も走るよ……大丈夫。捻っただけって言われたし」

 わたしは勝手ながらに「ひねっただけ」その言葉にホッとする。
 だからって、わたしのしたことが許されるわけじゃないんだけどね。

「わ、わたしも、なんでも協力するから」

 勇気を出して声をかける。
 だって梨々花ちゃんの怪我はわたしのせいなんだもん。
 少しでも……役に立ちたいよ!

「……とにかく。最初は俺がおんぶするよ!いざとなったら、走ってくれるか?」

 優斗くんは怒っているのかな……。
 わたしのことなんて知らんぷりをする。

 それは仕方ない。
 わたしが梨々花ちゃんを突き落としたと知っているなら。
 当然の反応だと思ったから。