梨々花ちゃん、すぐに起き上がらなかったけど。
 大丈夫だったかな…。


 ダメだ。やっぱり戻ろう。
 そう思いなおして、さっきの現場に戻ることにした。

 すると。わたしが戻ったころには、梨々花ちゃんの姿はなかった。


 いない……。
 最悪の事態が頭をよぎって、ぞっとする。



 そんなわたしの耳に、梨々花ちゃんのことを話す女の子の会話が聞こえる。

「階段から落ちた子、病院いったってさ」
「え、死ぬとかないよな?」

 死ぬ。
 その言葉に、冷や汗がどっと背中に流れる。

「いや、意識はあったっぽいよ。ただ念のためとかって……」

 良かった。もしも梨々花ちゃんの命に危険があったら。
 わたし――。

 安心したのと、後悔と……。
 いろんな感情で泣きそうになった。

 
 明日学校で会ったら、ちゃんと謝ろう。
 それとも、病院に行った方がいいのかな。

 そんなことを考えていたら。


 あれ、なんだろう。
 なんだか違和感を感じる。
 制服の右ポケットに、なにか入っているような。


 確認すると、真っ黒な封筒。
 それは手紙だった。
 
 
 ドクンと心臓が跳ねる。