梨々花ちゃんの体がふわりと浮いたかと思えば。
 つぎの瞬間には、鈍い音が響きわたる。



 ――ドタッ!!!


 目の前のいたはずの梨々花ちゃん――。

 わたしは思わず目を疑った。
 だって、階段の下で倒れていたんだ。


「きゃああああ!!」
「どうしたの!?」
「階段から誰か落ちたよ!!!」

 他の生徒たちから次々に悲鳴が上がる。

 わ、わたしじゃないよ。
 そんな。わたしはただ腕を掴もうとしただけなのに。

 ふるふると頭を左右に振った。
 違う。違うの……。わたし、わたしはただ――。

 あたりが一気にざわつく。
 みんなが梨々花ちゃんに駆け寄っていく中。
 ――わたしはその場から逃げ出した。



 ハア。ハア。
 息が苦しくなるくらい、全力で走った。
 
 どうしよう。どうしよう。
 なんてことをしてしまったんだろう。

 後悔と自分のしたことがこわくなりぎゅっと目をつむる。

 わたしは、梨々花ちゃんを……。