「私が素敵な記事にしてあげるからさ」
「や、やめて!お、おかしいよ!」
「七緒ちゃんが、言ったんじゃん。ネタを自分で探しに行かないとって」
「言ったけど。それは……」
「だから作ることにしたの。良いネタを!」

 わたしは足にぐっと力を入れて、歯を食いしばった。
 やめて!
 このままだと、わたし……。


「ア、アリアさんなんて、いなかった。それでいいじゃん」
「だから私が作ってあげるよ。七緒ちゃんの転落事件を……ね」
 
 わたしの体は、さらにドンっと押される。

 
「ちゃんと悲劇に書いてあげるからさ……。新聞に映えそうなケガでよろしくね?」

 ふと、一瞬力が弱まった気がした。
 同時に少し気が緩む。

 つぎの瞬間。 
 肩をドンッと押しだされる。


 あ、これダメだ。
 ……このまま、落ちるっ!!


 慌てたわたしは、ぐッと萌香ちゃんの服の襟元をつかむ。
 絶対に落ちたくない!
 離すもんか……!
 

「や、やめてよ!離してっ」

 焦った萌香ちゃんは、身体をねじる。

 あ、だめだ。
 足元が宙に浮く感覚。

「た、助けて……」
「離してってば!私まで落ちちゃう…!」


 お互いにバランスを崩してしまった。
 そう思った瞬間。

 ふわりと、全身が宙に浮くような感覚。

 そして……二人の声が重なった。
 

 
 
「「きゃぁぁぁぁぁああー!!」」



 重なった叫び声は……。
 二つの影と共に、外の暗闇に消えてしまった。