ハア、ハア、
 どうしよう……。

 萌香ちゃんのことが、こわいよ。
 心臓がドクンドクンと跳ね上がる。 


 全速力で走った。
 そのはずなのに、すぐ背後に気配を感じる……。


 ハァ、ハァ。
 耳元に聞こえてくるのは、萌香ちゃんの息づかい。


「いたっ、」
 
 近くに気配を感じると同時に、ぐいっと腕を強い力で後ろに引かれる。

「知らなかった。七緒ちゃんより、私の方が足早いんだ」

 振り向くと、ニコッと笑っている萌香ちゃん。
 
 全速力で走ったのに。
 簡単に追いつかれてしまった。

 掴まれた腕を振り払おうとしても、ぐっとつかまれた腕は離れそうにない。

「い、いたいよ!」

 痛みだけが腕に広がっていく。
 そのまま腕を引っ張られて、足も動いてしまう。

「や、やめて!萌香ちゃん!」
 
 しばらく進むと、ぴたりと足が止まる。


「ねえ、ここから落ちたらさ、どうなると思う?」

 横を向くと大きな窓。