「七緒ちゃんはさ、新聞部で活躍してて、一番評価されてるんだから。もう十分でしょ?」
「も、萌香ちゃん?」

 なんでだろう。萌香ちゃんが、ちょっと……怖い。


「七緒ちゃんが私に教えてくれたんだよ?もっと強欲にネタをとりにいかないとって……」


 そう言って、ふわりと笑う。 
 いつも見てきた笑顔のはずなのに。
 ぞわっと寒気が走る。

 
「だから、私も七緒ちゃんみたく、がんばってみることにしたよ」


 萌香ちゃんが、わたしに近づいてくる。
 なんだかこわくて、わたしは反射的に一歩下がった。


「特大スクープがないならさ! 作ればいいんじゃないかなって思ったの!」
「つ、つくるって……?」


 わたしは恐る恐る聞き返す。

 
「私の記事のために、体張ってくれるよね?」

 いったい、何を言っているの?
 混乱するわたしに萌香ちゃんは続ける。

「死ななくてもいいから。ただ、意識不明くらいだとちょうどいいかも」

 い、意識不明⁉
 なにを言っているの?

「や、やだなぁ……そんな冗談面白くないよ」

 声がふるえた。
 萌香ちゃんの言ってることが、冗談であってほしかった。

 だけど淡い期待はすぐに打ち砕かれる。
 

「ははッ!アリアさんの正体を追った新聞部のエース。夜の学校で転落事故!どう?この見出し。最高にエンタメじゃない?」

 叫んだ声が、静まり返った学校に響き渡る。
 はじめて萌香ちゃんが怖いと思った。