ドンッ!!
 急に近づいてきたと思ったら、肩を強く押された感触。

 ゆらりと体が後ろに下がる。

 あ、危ない!
 わたしは慌てて、手すりを掴んだ。

 場所はちょうど階段。
 手すりにしがみつかなければ、わたしは階段の下に落ちていた。

 サーっと血の気が引いていく。
 
「な、なにするの⁉ 今階段から落ちるところだったよ!」

「もちろん、知ってるよ?」

 にこりと笑う。
 その笑顔にぞくっと寒気が走る。

 も、萌香ちゃん?
 いったいどうしたの。

 
 
「ねえ、七緒ちゃん。今までわたしに言ってきた言葉……覚えてる?」

 目の前にいるのは、よく知っている萌香ちゃんのはずなのに。
 わたしはビクっとしてしまう。


「『萌香ちゃんは副部長なんだから、ガンガンいこうよ』」
「『もっとスクープ取らないと!』」

 萌香ちゃんが口にするのは、かつてわたしの口から出た言葉。
 わたしが萌香ちゃんに言った言葉たち。


 こうして言われてみて気づいた。
 わたしが萌香ちゃんに言っていた言葉は、ぐさりと心に刺さるような。

 励ますために言っていた言葉だった。
 だけど、萌香ちゃんにとっては、棘のある言葉になってしまったんだ。