「それは困ったね……」
「うん。でも、もういいかなー。なにもなければもういっかーって」

 充分すぎるくらい夜の学校を探し回った。
 だけどアリアさんなんて、存在しなかったんだ。

 そうだよ。
 招待状を送る幽霊。アリアさん。

 なんているはずがないのに。
 がっかりしたような、安心したような。いろんな感情が混ざる。


「今日はもう帰ろっか!アリアさんの記事のことは、また考えようよ!」
 
 スクープ記事が書けないのは残念だけど。
 これだけ探していないんだから仕方ないよね。

 そう思って、階段を降りようとすると。
 萌香ちゃんは、2階の廊下に立ち止まったまま動かない。


「そっか。残念だな」

 萌香ちゃんは、肩を落として残念そう。
 

「萌香ちゃん? どうしたの?」
「じゃあ、私がそのスクープもらっていい?」

 ぽつりと聞こえた声。
 いつもの萌香ちゃんの声色と違うような気がした。


「私がアリアさんのスクープ記事書いてあげる」

 そう言って、にこっと笑った。

 も、萌香ちゃん?
 どうしたの?

 なんだか萌香ちゃんの笑顔が、不気味に見えた。
 それにこんなに低い声は、はじめて聞いたから。

 様子のおかしい萌香ちゃんに戸惑っていると。