な、なんで?
 わたしは驚いて、口がぽかーんと空いたまま。


「え、なんで……」

 目の前にいたのは、アリアさんじゃない。
 ここにいるはずのない人物。

 ……萌香ちゃんだった。

「探したよ」
「え、いったいどうやって?」

 正門玄関のドアは鍵がかけられるはず。
 だからわたしは学校に忍び込んでいたんだから。


 
「下校するギリギリの時間に。見回りの先生がチェックし終わったあと、1階の窓の鍵空けといたんだ。その窓から無事に侵入成功!」

 そう言って、イタズラに笑った。
 
 な、なるほど!
 ずっと学校に忍ぶ方法以外にも、そんな方法があったなんて。

 萌香ちゃんの考えた方法は、わたしの忍び作戦よりも効率が良くて感心してしまう。



「……きてくれたんだね!」

 わたしは、萌香ちゃんにぎゅっと抱き着いた。
 正直、萌香ちゃんが来てくれて、ホッとしたんだ。

 
 夜の学校。このいつもと違う空間。
 誰かいてくれるだけで、こんなにも心強いだなんて。

 怖くて強張っていた顔が自然とほころぶ。
 それから。


「アリアさんの情報はつかめたの?」

 わたしたちは、懐中電灯で照らしながら、学校を見回ることにした。

「それがさ全然。1階をぐるりとして、今は二階を探索してたんだけど。幽霊らしきものに出会ってないよ」
「そっか……」
「やっぱり、アリアさんなんて存在しないのかなー」
 
 こうして夜の学校を一緒に歩いているのが、不思議な気分。
 さっきまで一人の時は、怖くて仕方がなかったのに。
 萌香ちゃんが来てくれた途端、なんだかイベントの様に思えてきた。