ヒタッ。ヒタッ。
 なにかを小突いたような物音が聞こえる。

 ドキリと心臓が跳ねる。

 先生がカギをかけているから、正門は開いていない。
 だからこの学校に、わたし以外に誰もいるはずがないのに。

 冷やりと汗が背中を流れる。

 


 もしかして……。
 アリアさん!?

 わたしは息をひそめて、耳を澄ます。
 ヒタッ。ヒタッ。

 ヒタッ。ヒタッ……。

 その音は、どんどん大きくなっていく。
 近づいてきている証拠ってこと。

 ごくり。わたしは息をのむ。

 アリアさんに会ったら、問い詰めてやろう。
 聞きたいことはたくさんある。

 だけどなんだか足が震えてきちゃった。
 もしも、アリアさんが悪い幽霊だとしたら?

 見つけてしまった途端。
 死後の世界に連れていかれちゃうかもしれない。

 そう考えたら。
 ぞわっと全身に鳥肌が立つ。

 怖くないと思っていたのに。
 いざアリアさんと対峙するかもしれないと思ったら。
 手も足もふるえている。
 

 ヒタッ、ヒタッ。
 足音がぴたりと止まった。

 そして気配を感じる。
 ぱっと顔を上げた。

 すると。

「みーつけた」

 心臓が止まりそうになる。