声は出せないし、なにもすることがない。
 暇を持て余したわたしは、こくん、こくんと、眠気に襲われてきた。

 ……ダメっ!眠ったりしたら。
 アリアさんを見つけるんだから!
 
 そう意気込んでみたけど、うとうととしてきて、瞼が閉じてしまった。


 がくんと、頭が揺れて、次の瞬間にはバランスを崩してしまう。
 
 ガタッ!
 大きな物音と共に、わたしの体が掃除用具入れから飛び出した。

 どうやらわたしは、立ったまま眠ってしまっていたみたい。
 慌てて教室に壁掛けられた時計を確認する。
 

 すると。
 今の時刻は、18時50分。

 記憶の中では、夕方だったのに。
 窓の外を見ると、空は真っ暗でだいぶ寝てしまったと気づいた。

 ……やっちゃった。
 でもこれで、夜の学校に忍び込めたってことだよね?

 結果的には、目標を達成していたようだ。

 
 しかし、あらためて見渡すと。

 夜の学校は真っ暗で、シンと静まり返っている。
 いつもの学校とは、雰囲気が全然違う。

 一気に怖くなってきた。

 わたしは顔をフルフルと左右に振った。
 大丈夫。わたしは、アリアさんの正体を暴くんだから!

 こんなところで、怖がってたら、なにも取材できないよ!


 それに、夜の学校が不気味ってことくらい、覚悟してたんだから。


 そう、自分を奮い立たせてみたけれど。
 いざ夜の学校に、わたし一人だけだと考えたら…やっぱり怖い。

 不気味な夜の学校の雰囲気に、忍び込んだことを少しだけ後悔する。