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私はいつも以上に無心で仕事をこなすと、かすんできた目にパソコンを打つ手を止めた。

(今日はいつもより疲れたな)

うんと伸びをしながら事務所の窓を見上げれば満月が見える。私の手元の時計はちょうど十九時を指していた。

「水野、あがれるか?」

「はい。この資料だけFAXしたら帰ります。課長ももう帰られますか?」

「ああ、ちょうどシャットダウンした。そうそう、今日も水野の作ってくれた見積書とプレゼンシートのお陰で一件契約決まったよ」

「私のお陰って……課長のお人柄と営業トークの賜物かと」

「いやいや、水野の見積書は正確で粗利益まさにそれしかない数字で作ってある。プレゼンシートは顧客が目で見て選ぶ楽しみもありつつ、うちの文房具にしかない特色を上手にアピールしてあっていつも本当に営業しやすいよ。ありがとう」

香田課長はこうやって契約が決まる度必ず私にねぎらいの言葉をかけてくれる。いつものことなのに、今日はなんだか香田課長に優しい言葉をかけられれば泣き出してしまいそうだ。

(だめ、泣いちゃ……)

私はこみ上げてきそうになる想いを必死で喉の奥に押し込める。

「水野? どうかしたか?」