「楽しみにしてます、宮本さんのドレスすっごい綺麗だろうなぁ」

私がそう言えば香田課長が僅かに頬を染める。

「いやもう、恥ずかしいから梨花、あ……ほんとごめん。えぇっとその話題はその辺で」

「宮本さんってとっても可愛らしい方ですけどお名前も可愛いですよね」

「水野ー」

「すみません、もう言いませんよ」

香田課長が照れ隠しをするように肘を突いたまま、柔らかい黒髪をくしゃっと握るとパソコンに視線を移した。

そして直ぐに真剣な眼差しでメールをチェックするのが見える。私はこの特等席からこっそり見る香田課長の横顔が大好きだ。パソコンを的確に叩いていく長い綺麗な指に、すっと通った鼻筋、艶やかな黒髪にセンス良く合わされているシャツとネクタイ。

ずっとこうやって五年間、隣で見ていた香田課長の左手の薬指にはもうすぐ宮本さんとおそろいの指輪が光る。

私はいよいよこみ上げてきそうになった涙をぐっと押し込めると、マグカップを持って立ち上がった。