「サイテーだ……」

この期に及んでまだそんなことが心に浮かんでくる私はなんて醜いんだろうか。こんな自分だから課長は私を好きにならなかった。そう、本当はずっと前から気づいてる。

「課長が言ってくれたみたいに……真っすぐなんかじゃない……」 

嫉妬に歪んで、心根なんてひん曲がっている。こんな自分大嫌いだ。

「だから……好きになってもらえないんだよ……」

私は鞄からハンカチを取り出すと目元にぐっと押し当てた、その時だった。

「──ごめん、遅くなって」

「あ……」

恐らくマスカラが取れてるであろう顔をあげると航平が目の前に立っていた。航平はコンビニの袋とバケツを抱えていて、ビジネスバックからは手持ち花火が見えている。

「……えっと、とりあえず公園まで迂回するか?」

航平は困った顔をしていて、何故かこのまま駅の方へ向かえば五分でつく公園に迂回して行こうと提案するのは、間違いなく航平も香田課長と宮本さんの姿を見たということだ。そして堪えきれず泣いている私に最大限気を遣ってくれているということがすぐにわかった。

「大丈夫。もう見えないから」

「じゃあこのまま公園向かうか。飯も繭香の好きなの買ってきたし」

「え?」

「腹減っただろ。腹減ると元気でないしさ。まぁ、行こ」

私が小さく頷くとすぐに航平がゆっくりとした歩幅で歩きだした。