(……何だろ、定期を拾ってもらってから昨日までは凄くカッコイイって騒いでたのに、今日は何だかちょっと(かす)んでるんだよね……)

 つい昨日までは定期を拾ってくれた男の子とお近づきになれたら嬉しいと思っていた咲結だったのだけど、合コンの話を聞いた後から何故かその男の子が頭の中で霞みつつあった。

(まぁでも、せっかく杏珠が合コンの話を持って来てくれたんだし、とりあえず楽しもう! ってか私の事可愛いって思ってくれてるの、何だかちょっと恥ずかしいなぁ)

 合コンに若干乗り気でなくなっている咲結だったけれど、せっかく話をつけてくれた杏珠を立てる為にも明日は楽しもうと切り替える。

 それに、相手が自分を可愛いと言っていた事を思い出すと恥ずかしい反面やはり嬉しくもあり、授業中にも関わらず咲結の顔は終始にやけていた。

 翌日の放課後、杏珠や杏珠の友達とK高の男子が集まり、駅近くのカラオケ店へとやって来た。

 男女四人ずつの計八人で行われるこの合コン。美男美女の集まりだなと咲結は思っていた。

(男子はみんなイケメン揃いだし、女子はみんなモデル並みに綺麗で大人っぽいんだけど……私、浮いてない? せめてもっとメイクで大人っぽくするべきだった……)

 咲結も決して浮いてはいないけれど、どちらかというと童顔寄りの咲結だけ年齢よりも幼く見えるせいか、一人年下っぽく見えていた。

「咲結ちゃん、だよね?」
「あ、うん! この前は定期拾ってくれてありがとう!」
「いいって。目の前で落としてるの見たら拾うでしょ」
「そっか、そうだよね」

 隣に座った咲結の想い人、西片(にしかた) 隼人(はやと)が早速咲結に声を掛けてくると、きっかけとなった定期の件から話は弾んでいく。

「でも、あの日咲結ちゃんの定期俺が拾えて良かったよ」
「え?」
「だって他の男が拾ってたら俺ら知り合ってなかった訳だしさぁ」
「確かに」
「ってか咲結ちゃん、可愛いからモテるでしょ? 」
「いや、全然モテないよ。彼氏もいた事ないし」
「え? マジで?」
「うん」
「えー、じゃあさ、俺、咲結ちゃんの彼氏に立候補してもいいのかな?」

 話は盛り上がるし、思った通り良い人ではあるのだけど、話しているうちに咲結は彼への想いが冷めているのをひしひしと感じていた。