「いや、酷くなんかねぇんだ。嘘をついてた俺が悪かったし、世間の反応なんて、そんなモンだ。ただ、好き合ってたはずなのに、一瞬で連絡を絶たれて、離れてく。当時はその程度かとは思ったし、正直納得いかなかった」
「さっくん……」
「それ以降は、そういう思いをしたくなくて、異性に興味を向ける事はなくなった。こういう世界で生きる事を選んだのは自分だから、一生恋愛なんてしなくていいって思ってた……けど、咲結と出逢って、こんなにも俺を想ってくれるお前を見てたらさ、恋愛も悪くねぇなって思えたし、あの時の別れも、お前と出会う為だったとしたら、別れて良かったって思う――って、何言ってんだろ、俺。何か、ガラじゃねぇな、こういうの」

 いつになく自分の話をしてしまった朔太郎はガラじゃないと苦笑いしつつ、咲結に視線を向け直す。

「咲結、俺、何があってもお前の事、全力で守る。今日は助けられ無かったけど、次お前に危険が迫った時は必ず助けに行く。俺の命に替えても、お前の事は絶対に守るから……俺の傍から、離れないで居てくれる?」
「……うん、離れない……。私は絶対、離れないよ」
「ありがとな、咲結。大好きだ」
「私も、大好き」

 見つめ合い、互いの想いを伝えあった二人の距離は縮まり――唇と唇が触れそうになった、その時、

「――悪い、電話が……」
「ううん、大丈夫だよ。気にしないで、電話に出て」

 朔太郎の電話が鳴った事でキスは寸止めという結果になり、若干気まずい空気が漂っていた。

 そして、朔太郎は理仁に呼び出されてしまい、この日は咲結を自宅まで送って別れる事になった。

 その夜。

「はぁ……今日はちょっとだけ、惜しかったな……」

 お風呂に入り、ベッドの上に倒れ込んだ咲結はポツリとそんな言葉を呟き、

「……キス、しちゃうかと思った……」

 あの寸止め直前の事を思い返していた。