「へぇ~、そんな事があったんだ?」

 翌日、学校へ着いた咲結は同じクラスで親友の寿(ことぶき) 優茉(ゆま)に昨日の夕方、朔太郎に助けられた出来事を話していた。

「で、その人格好良かったの?」
「うん、そうだね。見た目ちょっとチャラそうでナンパして来た人たちと大差ないなぁって思ったけど、結構格好良かった」
「そっかぁ、イケメンかぁ~羨ましいなぁ、私も助けてもらいたーい」
「えぇ? 優茉は彼氏いるから彼氏に助けて貰えばいいじゃん」
「いやまぁそうだけど、イケメンに助けて貰えるのはやっぱり嬉しいじゃん。何か漫画みたいでさぁ」
「うん、まぁ確かにね。そうだよね、よく考えてみれば漫画とかに良くある展開だったよね」
「そうだよ、咲結そういうの好きじゃん。で、勿論名前聞いたり連絡先交換したんでしょ?」
「え? いや、名前は聞いたけど、連絡先は――」

『交換してない』と言葉を続けようとした咲結だったのだけど、

「ねぇねぇ咲結!!」

 息を切らしてやって来た隣のクラスの友人、皆瀬(みなせ) 杏珠(あんず)の声によって掻き消されてしまう。

「杏珠、何なのよ朝っぱらから騒がしいなぁ」
「騒がしいとは何よ、せっかく咲結が喜ぶとっておきの話を持って来たのにぃ」
「とっておきの話?」

 咲結の問い掛けにウェーブがかった栗色の長い髪を軽く整え頬を膨らませた杏珠は抗議しつつも『とっておきの話』とやらを話し出した。

「実はね、K高との合コンが決まりましたー!」
「え? マジか! 杏珠大好きー!」

 杏珠の話を聞いた咲結は勢い良く杏珠に抱きつくと、その表情には笑顔が溢れていた。