「……あの、さっくん」
「ん?」
「真彩さんから、聞いたんだけど……その、さっくんは、鬼龍組っていうところの組員さんって、本当なの?」

 咲結がそう口にすると朔太郎は一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐにいつも通りの笑顔を浮かべ、

「あー、姉さん話したのか。そうだよ。俺は鬼龍組の組員だ。わざわざ話す必要は無いかと思って言わなかった」
「……そう、だったんだ……」

 咲結の表情がどんどん曇っていくのを目の当たりにした朔太郎は、

「怖いか? 悪い、やっぱ初めに話しておくべきだったな。送るから、もう行こうぜ」

 自分の素性を知った咲結を気遣い、家まで送ると言って部屋を出ようとする。

 けれど咲結は、

「待ってさっくん、違う! そうじゃないの!」

 大きな声を上げて朔太郎を制止した。

「別にいいって、そういう反応したからって咲結を嫌いになるとかねぇし」
「ううん、私は別に怖いとか思ってない! ただ、いきなりで驚いただけ! その、私、極道の世界? とか全然分からないけど、危険な世界っていうのは分かる。そんな危険な世界にさっくんがいるのかと思うと、不安だけど……でも、カッコいいなって、思った」
「……は?」
「だからさっくんはいつも余裕で、大人で、強いんだね! ますます惚れちゃった!」

 さっきまでの不安げな表情から一変、満面の笑みを浮かべた咲結に、朔太郎は面を食らっていた。