いきなり極道だのという話を聞かされて頭が追いつかないのに、朔太郎にはこれ以上深入りすべきではないと言われてしまい、咲結はどうしていいか分からなかったのだ。

(極道……漫画とかドラマでしか知らない……。そんな世界を、さっくんは生きてるの?)

 どちらも口を開かず沈黙で気まずい空気が流れていた、その時、

「ママ、おかえり! 理真がママ探して泣いてるよ!」

 どこか真彩に良く似た面影を持つ少年がいきなり襖を開きながらそう口にした。

「悠真! 駄目じゃない、お客様が居るんだからきちんと声掛けしてから開けなきゃ」
「あ、ごめんなさい。いらっしゃいませ、お姉さん! ぼく、鬼龍 悠真です!」
「あ、えっと、どうも。橘 咲結です」
「ごめんなさいね、咲結ちゃん。この子、私の息子なの。朔太郎くんにすごく懐いてるのよ」
「お姉さん、朔のお友達?」
「え? あ、うん……そうだよ」
「そうなんだ! あ、朔!」
「おー、悠真。どうしたんだ?」
「理真が泣いてたからママを呼びに来たんだよ」
「そっか。あ、姉さん、ありがとうございます。荷物は全て運んで置いたんで、悠真と理真のところへ行ってください」
「ありがとう。それじゃあ、私はこれで」
「お姉さんバイバイ」

 荷物を運び終えた朔太郎がやって来た事で悠真と真彩は客間を出て行き、朔太郎と咲結の二人が残された。