広い玄関ホールに長く続く廊下、飾ってある風景画や高価そうな壺に驚きながら、15畳くらいはありそうな客間へ通された咲結は、「あの……」と真彩に声を掛ける。

「驚いたでしょ? 恐らく貴方も気付いていると思うけど、ここは鬼龍組組長の御屋敷でもあるの。それと、朔太郎くんはその組員の一人なのよ」

 ここへ来て薄々気付いていた事を真彩に言い当てられた咲結は言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くす。

「朔太郎くんは隠すつもりが無かったみたいだけど、やっぱり伝えていなかったのね。それと……咲結ちゃんは朔太郎くんの事が好きなのよね?」
「……それは……」
「いいのよ、隠さなくても。ただね、私たちは皆、極道の世界を生きてる。その分危険が伴うの。私も元は貴方と同じ、この世界に縁の無い暮らしをしていたから戸惑う気持ちは良く分かる。でもね、だからこそ朔太郎くんとこの先も関わりたいのであれば、それなりの覚悟が必要になるけど、咲結ちゃんはまだ高校生よね? 大人の朔太郎くんに魅力を感じるのも分からなくはないけど、出来る事なら、これ以上は深入りしない方がいいと、私は思うのよ……」
「…………」

 真彩の言葉に、咲結はますます何も言えなかった。