買い物を終えた咲結は朔太郎が運転する車の助手席に乗り、運転席側の後部座席に真彩が座る形になった。

「咲結ちゃん、まだ時間あったりする?」
「え? は、はい……まあ……」
「それならちょっと、家に寄っていかない? 貴方に話したい事があるの」

 朔太郎が車を発進させたタイミングで真彩の方から咲結にそう声を掛けると、突然自宅に誘われた咲結は目を丸くする。

「え? で、でも……」
「咲結に話? まあ、悠真(ゆうま)も帰って来てるだろうし、理真(りま)も昼寝から起きてる頃かもしれないッスから、早めに帰る方がいいッスよね。つー訳で咲結、悪いけど一旦家に寄って行くから俺が荷物片付けてる間、姉さんと話しててくれよ。な?」
「え? あ、うん……それじゃあ、お言葉に甘えて……」

 何が何だか分からない事だらけの咲結をよそに話は進み、急遽真彩の自宅へ向かう事になった。

(……悠真と理真って、誰? それに、今から向かうのは真彩さんの自宅じゃないの? さっくんも一緒に住んでるの?)

 咲結の中で疑問は膨らむばかりだった。

 それから暫くして高級住宅地へと差し掛かり、窓の外に視線を向けていた咲結は驚くばかり。

 そして車は坂を上っていき、上りきった先の一際大きな敷地にある家の前で停まった。

「……こ、ここが、真彩さんのご自宅なんですか?」

 寄棟造りの瓦屋根に敷地と道路を隔てる高い外壁。そして門の前には硬い表情の男が数人立って、車を出迎えていた。

「そうだよ。まぁ、咲結の言いたい事は分かるけど、今はとりあえず……姉さん、俺荷物は運んで来るんで、咲結の事お願いしますね」
「勿論。咲結ちゃん、こっちよ」
「咲結、姉さんに付いてって、中で待ってて」
「わ、分かった……」

 咲結は聞きたい事だらけの状況に戸惑いつつも、言われた通り真彩に付いて中へ入っていった。