あの日以降、心のモヤモヤが晴れないまま、日にちだけが過ぎていく。

 ある日の放課後、優茉と寄り道した帰り、母親から買い物を頼まれていた咲結は電車に乗る前に済ませてしまおと、いつもは寄らないスーパーへ立ち寄った。

 すると、

(え? また……?)

 スーパーの野菜売り場で、またしても朔太郎と先日も一緒にいた女の人が二人仲良く買い物をしている姿を目撃した。

(何なの? いくら尊敬してる人の奥さんって言っても、これじゃあまるで夫婦じゃん。相手の女の人も、さっくんの事、凄く信頼してる感じだし……)

 送迎を頼まれただけならまだ納得も出来た咲結だけど、あんな風に仲良く買い物をしている風景は何だか凄く嫌だったのか、気付けば二人の方へ足を進めていき、

「さっくん!」

 怒りに身を任せた咲結は、無意識のうちに朔太郎の名前を呼んでいた。

「咲結?」

 それには流石の朔太郎も驚いたようで、目を丸くしながら咲結を見る。

 何やら怒っている咲結と驚いている朔太郎、二人の間に立っていた女の人が「朔太郎くんの、知り合い?」と朔太郎に尋ねると、

「あ、はい。ほら、この前俺と姉さんと悠真が一緒に居たら、夫婦だと間違われた話したじゃないっすか、コイツがその勘違いしたヤツです」

 可笑しそうに笑いながら朔太郎は聞いてきた女の人に咲結について説明をする。

 それを聞いた彼女は、

「あ、この子がそうだったのね。初めまして、私、鬼龍(きりゅう) 真彩(まあや)って言います」

 未だ膨れっ面をしている咲結相手に、笑顔で名前を名乗った。