それを聞いた咲結は一瞬表情を曇らせたもののすぐに笑顔を浮かべ、

「ごめんね、さっくん。それは出来ないや。私、好きになったら諦め悪いんだ。可能性が0じゃないなら、私は諦められないから!」

 ハッキリ、諦めるのは無理だと告げた。

 それには朔太郎も呆気に取られ、思わず咲結に見入ってしまっていた。

「――お前、面白いな。そんな事言う奴初めてだ。普通あれで諦めるだろ?」
「あんな事くらいで諦めるなんて、それは本気じゃない証拠だよ。私の事が嫌いとか、年下なんて恋愛対象として見れない、有り得ないって言われたら諦めるかもしれないけど、さっきのさっくんの言い方じゃ納得出来ない。だから、諦めない!」
「……はあ。お前、頑固だな」
「そうかも。他人に言われたくらいじゃ直らないかもしれない」
「…………それじゃあ一つだけ、咲結に話しておく事がある」
「何?」
「ナンパされたり、男に連れ込まれそうになったらすぐに大声をあげる。自分で何とかしようなんて考えない。変な輩に襲われそうになったら人の多いところに逃げて、必ず、俺に連絡すること。今言った事、守れるか?」
「…………うん、守るよ?」
「……なら、こうして会ったりするのはいいよ。けど、恋愛対象とかそういうのは、今は考えられない。それは分かってくれるか?」
「うん! まずはもっとお互いを知らなきゃいけないもんね! これからもちょくちょく会ってくれるなら、今はそれで充分!」

 結局、咲結に根負けした形で二人の関係は【知り合い】から【友達】へと発展した。

 咲結にとって、この一歩はとても嬉しいものだった。


 それから暫く話をした後、朔太郎が咲結を家まで送って行った。

「それじゃあさっくん、また会ってね?」
「ああ、いつでも連絡してくれ。会える時は会いに行くから」
「うん! 送ってくれてありがとう! 気を付けて帰ってね」
「ありがとな。それじゃ、またな」

 咲結に見送られて朔太郎は車を出した。

 一人になった車内でふぅーっと息を吐く。

(……高校生って、若いな……。ま、今はまだ、俺がどんな人間か、詳しく言わなくていいよな)

 朔太郎はある事を言うべきか悩んだものの今はあくまでも【友達】という立ち位置なので、そこまで詳しく説明する必要はないと結論付け、言わない選択をして帰路に着いた。