「さっくん!」
「おう、待たせたな」
「あの、わざわざごめんね?」
「いいって。ほら、早く乗れよ」
「う、うん……」

 朔太郎の元へやって来た咲結は迎えに来てくれた事が嬉しい反面、周りにちらほら学校の生徒たちが居る中で男の人の車に乗り込む事に少々戸惑いを感じていた。

(傍から見たら、彼氏の車に乗り込んだって思うかな?)

 けれど、乗り込んでしまえば戸惑いは優越感へと変わり、そんなしょうもない事を考える余裕すら生まれていた。

「何処か行きたいとこあるか?」
「えっと……特には……」
「ねぇのか? 別に遠慮する事ねぇんだぞ? 今日は時間あるから、行けるとこなら連れて行ってやれるぜ」

 そう言われると咲結は迷ってしまう。

「それじゃあ、どこかゆっくりお話出来る所がいいな」
「話? んーそうだな……それじゃあ俺のとっておきの場所に連れてってやるよ」
「とっておきの場所? 私に、教えてくれるの?」
「ああ、特別な」
「嬉しい!」
「そうか? それじゃあ行くか」

 朔太郎の『とっておきの場所』へ連れて行って貰える事になった咲結は自分が朔太郎にとって特別な存在になれた気がして嬉しくなり、目的地に着くのが楽しみで仕方なかった。