「迎えに来るならどんな奴か見てやろうかな」
「止めてよ。ってか、さっさと帰りなさいよね」

 咲結が男の事で浮かれているのが面白くない亮介は、何とかして自分に目を向けて貰おうと絡むも相手にされないどころか邪険にされる。

「玉井、悪い事は言わないから、ここは帰った方がいいよ」

 見兼ねた優茉が亮介にそう声を掛けると、

「あ! さっくんから着いたって連絡が来た!! それじゃあ優茉、私行くね!」

 朔太郎から連絡の来た咲結は嬉しそうに声を上げると、優茉にだけ挨拶をして慌ただしく教室を出て行った。

「……なあ寿、『さっくん』ってどんな奴なんだよ?」
「うーん、まあ一言で言うなら、超優良物件な男の人よ」
「はあ?」
「玉井、アンタが咲結を好きな事は分かるんだけど、残念ながらアンタは咲結のタイプじゃないのよ。だから悪い事は言わない、もう諦めた方がいいよ」

 いつも咲結と共に居る優茉だからこそ、亮介が咲結を好きな気持ちも、亮介の事が全く眼中に無い咲結の気持ちも分かるだけに、これ以上亮介が傷つく前に何とかして諦めさせたいと助言するのだけれど、

「アイツが俺の事意識して無いのは自覚してる。けどさ、分かってても好きな気持ちは止められねーんだよな」
「玉井……」
「それに、諦めるにしても俺は絶対自分の気持ちを伝えなきゃ納得出来ねぇからさ。もう少しだけ頑張ってみるつもり。じゃあな」

 自分が納得するまでは頑張りたいという亮介の想いが少しでも報われるといいのにと思った優茉は、それ以上何も言う事はなかった。