「何だよ、テメェは」
「そうだよ、邪魔すんなよ」

 いきなり現れた赤髪の男に嫌悪感を示したチャラ男たちが詰め寄るも、

「おい、コイツら知り合いなのか?」

 そんなチャラ男たちを無視して呑気に咲結に話し掛ける赤髪男。

「いえ……全然知らない人、です」
「ま、そうだろうな」

 咲結の言葉を聞いた赤髪男は納得した様子で再びチャラ男たちに視線を向けると、

「お前らさ、この子が嫌がってんの分かんだろ? 悪いことは言わねぇ、諦めてとっととどっか行けよ。今なら見逃してやるから」

 呆れ顔で男たちに言い放つも、その程度で諦めるのならば、もっと前に諦めてどこかへ行っているだろう。

「お前、一体何なんだよ? この子は俺らが先に目つけたんだからよ、お前こそどっか行けよ」
「そうだよ、関係ねぇ奴は引っ込んでろっての」

 それに、後からのこのこ現れた男に言われて立ち去るような輩でもないだろうから、このまま穏便に話し合いで済むとも思えず、三人の会話を目にしている咲結は内心気が気でなかった。

「あのさ、順番なんて関係ねぇんだよ。嫌がる事をするなっつってんの」
「だから、そんな事テメェに言われる筋合いねぇんだよ――」

 やはり咲結の不安は的中し、金髪男が赤髪男に殴りかかろうと拳を振り上げた。

「き、きゃあ!」

 赤髪男の背後に居た咲結は彼が殴られると思い弱々しい悲鳴を上げて目を瞑るも、

「い、痛てぇ!!」

 大きな声を上げたのは赤髪男ではなく金髪男の方で、咲結が恐る恐る目を開けると赤髪男は金髪男の腕を捻りあげていたのだった。

「痛てぇ……、畜生……やりやがったな……」
「おい、大丈夫かよ!?」
「絶対骨折れてるって……」
「まだやるか? 俺は構わねぇけど、これ以上やるってなら腕の骨一本じゃ済まねぇかもなぁ?」

 痛がる金髪男と恐怖に震える茶髪男。二人は赤髪男の挑発には乗ることなく、

「クソがっ!」
「覚えてろよ!!」

 お決まりの捨て台詞を吐いて走り去って行った。