「い、いえ。そういうわけでは……」

慌てて窓から離れて、鳰先輩のほうを向く。

「心配しなくて大丈夫だよ。友也くん、人気だけどガードが堅いから」
「ガード?」
「女子とは適度な距離を保つようにしてるし、告白も全部断ってる」
「……よく知ってるんですね」
「同じ小学校だったから」
「そうなんですか?」

小学校の知り合いが同じ学校にいるなんて、めずらしい。
この学校は私立中学校で、学校の特性上、同じ小学校から来る人は少ないから。

でもそれなら、学年がちがうふたりが仲良いのもうなずける。

「そういえば、どうして鴻上くんが部長をしてるんですか?」

ふと思い立って、ずっと気になっていたことを尋ねてみた。

「友也くんじゃ力不足だって?」
「そういうわけじゃなくて!」
「あはは、冗談だよ」

と、笑い飛ばす鳰先輩。

ひやりとしちゃったよ。純粋に気になったから尋ねただけなのに、文句に聞こえてしまうとは思わなかった。
先輩でも冗談を言ったりするんだ。

「二年生の友也くんが、三年の僕を差し置いて、どうして部長をしているかってことでしょ?」
「はい。鳰先輩も部長に向いてるのになって」
「友也くんと吏くんは、僕を推薦してくれたんだけど、僕が友也くんに譲ったんだ」

……譲った?