たくさん練習し、たくさん食べ、あとはシャワーを浴びるだけとなった夜。
歌劇部の子たちがシャワールームを使っているので、空くまでの間、宿泊所をぶらぶらすることに。

二階の廊下を歩いていると、窓の外を眺める鳰先輩を発見した。

おとなっぽい青髪に、黒ぶちのメガネをかけている先輩。
知的なイメージに合った、黒一色の洋服をまとっている。

かっこいい男の子がたそがれていると、絵になるなぁ……なんて思っていると。

「あっ、咲也くん」

鳰先輩がこっちを向いた。

「こんばんは。なにしてるんですか?」

近づきながらあいさつをする。
すると、鳰先輩が「こっちこっち」と手招きしてきた。

「見て」

楽しそうに指さす先は、窓の外。
見てみると、女の子と男の子が向かい合ってなにかを話しているようだった。

ふたりとも、部屋着のような格好をしている。
女の子は、歌劇部の二年生で。
男の子のほうは、鴻上くんだった。

「なにをしてるんでしょうか?」
「告白だよ、きっと」

えっ! 告白?

よく見ると、宿泊所からもれる明かりと外灯に照らされた女の子の顔が、赤く染まっている。
動きも、はずかしそうに、もじもじしている。