「私…ずっと自分の気持ちを押し殺して生きてきたよ。本当は二人が喧嘩をするところなんて見たくないし、いつも私に八つ当たりするお母さんも、怒鳴り続けるお父さんも…ずっと嫌だった」

両親に向けて、私は胸の内にあったものを吐き出すように語り出す。
自分がずっと抱えてきた苦しさ、家族との距離、そして今まで言えなかった本当の気持ち。
一つ一つ言葉にしていくたびに、心が少しずつ軽くなっていく。

「でもね、二人のこと…心の底から嫌いになんてなれなかった。嫌なことだって沢山あるはずなのに楽しかった思い出はなかなか消えてくれないの」

その瞬間涙がじわっと這い上がってくるのが分かる。
私は幼い頃からいつまで経っても泣き虫みたいだ。つい感情が昂って涙がでてしまう。

「っ…なのに急に離婚するとか、どっちを選ぶかとか、そんなの分かんないよ!自分勝手だよ!!」

一気に話したせいかつい息が上がってしまう。言い終わった時、両親の反応は見えなかった。
お母さんはまだ俯いたまま黙っているし、お父さんも無言でこちらを見つめている。
この静寂が続く間、私は自分の中に芽生えた新しい決意をしっかりと感じていた。もう逃げない。どんな結果になっても、自分を偽ることはしないと心に誓ったのだから。

彗の姿が一瞬頭に浮かんで、私はもう一度だけ大きく息を吸った。
「私は!ちゃんと二人と向き合いたいっ…だから、お願い。喧嘩なんてしないで、本音で落ち着いて話し合いたいの」