朝食を食べ終わり、帰る時間が近づいてきた。
玄関先で靴を履くと彗が私に声をかける。
「家まで送るか?」
「ううん、大丈夫。ここまでで十分だよ。ありがとうね」
心配そうな表情を浮かべている彗に申し訳なくて断ったものの、心の中では少し寂しさが残る。
けれど本当にその優しさだけで十分だった。これ以上のことは自分でやるべきことだと思うから。

彗と別れた後、一人で道を歩いているとその静けさに寂しさが少しずつ大きくなっていく。
でも、今の私にはその寂しささえも前に進む力に変えられる気がした。
「よし…!」
自分にそう言い聞かせて頬を軽く叩いて気合いをいれる。そんな時、ふとある疑問が頭に浮かんだ。

そういえば…彗は、結局昨日の夜なんで家を空けてたのだろうか?
さっきは聞くタイミングをすっかり忘れてしまっていた。少し理由が気になるけれど…今はそれどころじゃないよね。
自分の心の中で一度、迷いが顔を覗かせるが、そんなことに気を取られている場合じゃないと静かに自分を落ち着かせた。

まずは自分の問題を解決しなきゃ──そのあとにもし時間があったら彗に聞いてみよう。
そう決めて、私は前を向いて家へと足を進める。

家に着いたらなんと言われるだろうか。迷惑かけないでって怒られるのかな。それとも…心配、はないか。
けれど何を言われたとしてもやることは同じだ。