そうしていると少しずつ体の緊張がほどけ、やがて私はその温かさに包まれて自然と眠りに落ちた。

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「あんたなんて__産まなきゃよかった…!」

その怒鳴り声がいつも耳にこびりついて離れないの。私の頭の中に深く刻まれたその言葉は、いつも私を縛りつける。体が震えて、心が縮こまっていく。

「っうぅ、ごめ、ごめんなさい…」

泣きながら必死に謝る声が、幼い頃の私の口からこぼれている。
分かってるよ。私がいらない子なんてこと…分かってるんだよ。
ちゃんと仮面をかぶるから、相手の仮面を見て過ごすようにするから__いい子にするから。

だからもう言わないで。おねがい、お母さん…。
もう喧嘩なんてしないで。もう怒鳴らないで。怒らないで。泣かないで。

胸が締め付けられて息ができない。どうして私はこんなにも不必要なんだろう。どうして私だけが…私さえいなければ───。

『 いらなくなんかない。自分に嘘なんてつかなくていい』

ふと優しい声が聞こえた。彗の声だ。
君はいつも私が辛い時に現れて助けてくれる。どうして君の仮面は変わらないのかな…ひび割れた仮面にはなにがあるの?
もしその奥に隠しているものがあるなら、私はそれを知りたいよ。ねえ、彗__。

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夜中にふと目が覚めた。両親の声が反響して、寝起きに汗をびっしょりかいていることなんてざらにある。
いつも見るような夢だった…けれどそこには彗もいた気がした。

ぼんやりとした頭で布団から顔を上げると、下には彗の姿がない。

「…彗?」
彼はどこに行ったんだろう?部屋は静かで、かすかに外の風の音が聞こえるだけだった。
時計を見てみると、夜中の3時過ぎ。何かあったのかな…?
気になるけれど無闇に人の家を詮索するのは良くない気がしてしまう。結局私はまたベッドに潜り込むことにした。