その後も、私たちは軽く他愛もない話をしながら夕食を済ませた。彗のおばあちゃんが作り置きしてくれている煮物があったからそれを食べることにした。
優しくて、心があったかくなる…そんな味だった。

家族以外の人と食べるご飯の時間は、どこか穏やかで安心感があった。彗と一緒に過ごすと不思議と心が落ち着くからかもしれない。

外も本格的に暗くなってきた頃、私はふとある懸念があることに気付く。
寝る場所だ。そもそも一緒の部屋で寝るのもどうかとは思うけれど、私が急に上がり込んでしまったんだし仕方がない。けれど"同じ場所をで寝るのはさすがに駄目だ。

「…そういえば夜だけど私、床で寝るね。ベッドは彗が使ってね」
そう言うと、彗はあっさり首を振って「だめ」ときっぱり言い返された。

「お前はベッドで寝ろ。俺は床でいいから」
「でも、それじゃ…」
「いいって。ここは俺の家なんだから、客はベッドに決まってんだろ」

頑なに譲らない彗に、私は結局ベッドで寝ることになってしまった。布団の柔らかさが体を包み込むとほっとする反面、なんとなく申し訳ない気持ちが残っていた。
しかも、ふとした瞬間に彗の香りがふわりと漂ってきて顔が熱くなってしまう。
これは…やばい。落ち着かない気持ちを抱えながら私は目を閉じて布団にくるまった。