考えるだけで無理だ。どうしても好きになれないし、苦手な人種だと思ってしまう。思い出すだけで顔が引きつり、心の中で「うわぁ…」と叫びたくなる。

「あれ、想乃なにその顔?」
唯が不思議そうに私の顔をのぞき込むが、「何でもないよ…」と曖昧に答える。
どうせ唯は何を言っても星崎くんを褒め称えるに決まっているのだから。

バスケが始まって20分ほど経った頃、唯と私は少し休憩をとっていた。
汗をかいたせいか喉が渇き、水を飲み尽くす勢いでがぶ飲みしていると唯が「見て見て!」と目を輝かせながら叫ぶ。

唯の指差す先には、バスケットボールをする男子たちがいる。
「彗ー!こっち」
「おう」

星崎くんは軽やかにパスをした…と思ったら、そのボールは宙を舞い、ゴールに向かって一直線に飛んでいく。

「え?」
「きゃー!!やっぱかっこいい!」

周囲の歓声に私の驚きの声はかき消された。
パスをするふりをして、あの位置からゴールを決めるなんて。思わず「すごい…」と小さな声が漏れてしまう。

試合はその後も順調に進み、先程のことがあったせいか私は気づけば彼を無意識に目で追っていた。
無表情なのに、ほんの少しだけ楽しそうで真剣な、そんな顔。
今までに見たことのない表情だった。

その時、私はあることに気付いて目を見開く。
「仮面が…笑ってる」

思わず口を押さえた。隣を見れば、唯は試合に夢中で私の言葉など耳に入っていない。
だって、驚いたのだ。ずっと仮面を見てきた私だからこそ分かる、ほんのわずかな変化。

彼の仮面の口角が少しだけ上がっている気がする。

だが、次に見た時にはまたいつもの無表情に戻ってしまっていた。
なんで…?そう考えた瞬間、視界にオレンジ色の物体が飛び込んできた。

「え…」
「ぁ、…危ない!!!避けて!」

ばこん!!

気づいた時にはもう遅く、鈍い音がして顔面に強烈な衝撃が走った。