私達は少し離れた静かな場所へと移動した。
班のみんなに迷惑をかけてしまうかもと思ったけれど、彗が分かってくれるはずだからここだけは甘えておこうと思った。

「それで?話ってなに」
莉桜の方を見れば、仮面は私を睨んでいて前までの私なら逃げ出していただろう。今も本当は逃げ出したいと心のどこかで言っている。
でも、もう目を逸らしたりなんかしないから。

「…私は、莉桜がしてることはひどいと思ってる。私が嫌われる理由が嫉妬だけならやめてほしい」
莉桜はぴくりと眉をひそめ、仮面が先程より強い赤を放つ。けれど彼女は私の話を黙って聞いていた。

「でも、辛そうな顔をしてた…私は莉桜の気持ちが分からない。だから貴方と向き合いたい…教えてほしい」

強く、強く想いを込めて放つ。自分の言葉を隠さないように。

私の言葉を聞いて少ししてから、莉桜が口を開いた。
「私は…」
そこで言葉が止まり、歯を食いしばってから話を続けた。

「私だって、最初は宙が好きになる子はどんな子だろうって…きっと優しくて可愛い子なんだと思ってた。だから好きになろうって努力した。想乃と話してみようと思ってた」

悔しそうな表情で話す莉桜の瞳には涙が溜まっていた。
彼女の本当の想いを知れるように、聞き漏らさないように一言一句真剣に聞く。

「でも違った!あんたは…想乃はいつも取り繕って、ヘラヘラ笑って…!!ムカつく、素なんて見せてないくせに宙に好かれてる…」

そうやって言う彼女は、抑えていた涙が止まらないように溢れていた。

「なんで…そんな奴に負けなきゃいけないのよ」

その言葉に私はやっぱりなにも見れてなかったことに気付く。私の態度が莉桜の心にどれだけ傷をつけていたのか、彼女がどれだけ辛い思いをしていたのか。

「私は、宙くん本人から直接言われたわけじゃないから私の事を好きっていうのは信じない。でも、それでも…ごめんなさい」

「っ…!」
莉桜が私の言葉に目を見開く。

「正直莉桜のことは好きになれない…でも、私は昨日あなたの気持ちを傷付けた。本気の気持ちに私はへらへら取り繕って返してた」

彼女がどんな手段をとっていたとしても…莉桜の恋は本物で、優しいものだったと思うから。
怒っている時の貴方の仮面はすごく怖くても、恋をしている時の仮面はキラキラと輝いていたから。

「莉桜のもつ恋心は私なんかよりもっともっと立派で比べものにならない。だから__負けてなんかいないよ」

「ぅあ…っうるさい!上から目線に言いやがって…うぅ、大っ嫌い」
莉桜の声は震え、彼女の涙がさらにこぼれ落ちる。でもその向こうにある彼女の心の叫びを、私はもう見逃さない。