「今日は外の天候があまりよくないので、体育館は男女合同で使います」

体育館に着いてすぐ、先生から告げられた言葉に絶句する。
ただでさえ苦手なバスケ…。女子の中ならまだ笑ってごまかせるけれど、男子に見られてしまったら笑いものだ。ひとたまりもない。

「はぁ…」
ため息をつく私をよそに、唯は目を輝かせている。
「合同ってことは…彗くんのバスケ姿見られるってこと!?最高じゃん!」

彼女のテンションが高すぎて、私の気持ちはすっかり覆されてしまった。星崎くんのバスケ姿…やっぱり想像がつかないな。
そう考えながら頭をひねっていると、男子たちの声が聞こえてきた。

「彗のシュートさえあれば百人力だな!」
「だな!彗は俺らのチーム決定ー」

「…おい、俺そんな万能じゃねーぞ。勝手に決めんな」

面倒くさそうに返す彼の仮面は無表情だ。
そもそも彼の表情自体も基本的に変わらないし、やっぱり謎で未知な存在だ。

そんな彼を見ていると、不意に目が合ってしまう。

「あ」

思わず目をそらすが、視線を感じて横目でちらりと見るとまだこちらを見ている。最悪だ。
ただでさえモテる星崎くん…私が彼を好きだと勘違いされたら困る。

これまでに何度彼が告白される現場を見ただろうか。

「ずっと前から、好きでした…付き合ってください」
「ごめん、無理」

「彗くん、大好きです!」
「ごめん、無理」

挙句の果てに聞いた話では、ラブレターをもらった時も「無理です」と丁寧に一言だけ返したと聞いている。
同じことしか言えないのだろうか。
その度に何度仮面を見ても、彼の表情は変わらない。

きっと私が見ていない場所でも沢山の人にされているのだろう。告白した生徒の気持ちを考えると、少し可哀想に思えてくる。