私はそのあとも気分が落ち込んでいた。自分の臆病さが弱さが、悔しくて仕方ない。

「食べ終わった人はもうバス乗る準備してねー!」
先生の声が聞こえてきて意識が現実に戻る。周りは班のメンバーと集まって楽しそうにしているのに、自分だけがその輪から取り残された気分になってしまう。

「もう食べ終わった?」
明るい声が隣から聞こえてきて上を向く。まだ椅子に座って一人でいた私に声をかけてくれたのは宙くんだ。

「あぁ…うん、ごめん私も早く準備するね」
迷惑をかけてしまったなとすぐに席を立って準備に向かおうとすると、宙くんに腕をぐっと引き寄せられた。

「わっ…ど、どうしたの」
「想乃ちゃん、なんかあった?」
その言葉に目をつい見開いてしまう。なんで宙くんがそんなこと…。

『__私は…宙が好きなんだから』
彼女の言葉を思い出す。今なら、聞けるかな。

「…宙くんはさ、好きな子いる?」
私の言葉に彼は少し驚いた表情を浮かべる。
しばらくして「うん、いるよ」と穏やかな声が聞こえてきた。
そうやって言う彼の表情は優しくもあり切なく見えた。仮面にいつも淡い桃色が灯っている彼。
この想いがもし…莉桜が言うように私に向けられているのなら、私はその気持ちには答えられないだろうなと思ってしまった。

私には勿体ないくらいに優しくて、綺麗な色をしてるから。

「想乃ちゃんはさ…よく色々考えてるよね。今もきっと、理由があって聞いてきたんでしょ?」

優しい声色でそんなことを言う彼に少し驚いてしまう。その瞳の奥には、心配と優しさが混じった表情が浮かんでいた。
まるで何かを言いたげな口元が少し動いたかと思うと

「何があったのか分かんないけど、君は優しいから大丈夫だよ」

と静かに言った。

彼の声は柔らかく、どこかほっとするような響きがあって、仮面には優しい黄色が浮かんでいる。
彗とは違うけれど…なぜか彼の言葉には安心感を感じた。

「じゃあ、俺もう行くね!準備できたら来てね、またあとで!」
結局私は何も言えないまま宙くんは行ってしまった。優しい…その言葉は今まで何度も言われてきた言葉だ。
でも宙くんが言った「優しい」は、まるで私の心の中を見透かしているような響きがあった。
ただの励ましの言葉じゃない。私が感じている不安や孤独をちゃんと理解してくれているような、そんな温かさが含また、今までとは違う重みを持った言葉だった。