修学旅行二日目の朝。

私は窓から漏れる朝日で目が覚め、外の景色をぼんやりと眺める。
夜に彗と過ごした出来事を思い返しながら心の中で何かを整理しようとしていた。

「ん…あれ想乃もう起きてたんだ、おはよぉ…」
まだ完全に醒めきってないまぶたをこすりながら唯が目を覚ました。

「うん、おはよう。そろそろ朝食の時間だよ」
私は昨夜にあったことを悟られないように普段通りに接した。
そう言うとゆっくりと唯が起き上がり「お腹空いたなぁ。特別なメニューとかあるのかな」と微笑みながら言う。
朝からそんなことをすぐ考えている唯がなんだか少し面白くて、くすっと笑いがこぼれてしまう。

「そうかもね。楽しみ」
私達は準備を終えて食堂へと向かった。
食堂につくともう既にちらほらと生徒たちが起きてきていてそこはにぎやかな雰囲気で溢れていた。
様々な料理の香りが漂い、みんな朝食を楽しんでいるようだ。

周りを見ていると、男子生徒達のなかに彗の姿を見つけた。

目が合った瞬間昨日の出来事が頭をよぎり、つい目を逸らしてしまう。昨日の彗はなんだかいつもとは少し違う雰囲気だった気がして今更気恥ずかしくなってしまう。

思わず目を逸らしながらも、彼を見たことによってか私は昨日の思いが心の中で強くなっているように感じた。

彗に言われた言葉と向き合って、もっと素直になりたいと思った。
もし私でも…変われるなら、自分を変えてみたいと思ったから。

それに、昨日気付いたんだ。仮面だけでは例えられないほどの感情を、人はもってることを。莉桜に…彗に気付かされたんだ。

視線を落としながら朝食を取り、周囲の喧騒に耳を傾けていると莉桜が近くのテーブルに座っているのが目に入った。
私は彼女に中にある複雑な感情と向き合わなければならない。もう、逃げたくない。

『_あんたには分からないのよ、宙がどう思ってるかなんて!』

まだあの言葉が私の頭の中で駆け巡っている。あの時辛そうな表情を見せたのはどうして?涙をこぼしているように見えたのはどうして?

分からない。仮面がどれだけ表情や想いを伝えてくれても、私はその人の考えていることまで分からない。だから…自分の言葉で伝えて、聞かなきゃいけないんだ。

私は朝食を楽しみながらも、心の中で自分自身の変化を願い続けた。