考えにふける私の沈黙を破るように、彗が小さく笑った。

「ほら、こんな夜だからこそ素直になれるかもしれないだろ?」
私は彼の言葉に顔を上げると彼がどこか遠くを見つめていることに気付く。
星の光が彼の瞳に映り、仮面は無表情のままでも、現実の彼は普段は見せないような柔らかな表情を浮かべていた。

「彗は、どうして私のことを気にかけてくれるの?」
思わず聞いてしまった。こんなふうに私に言葉をかけてくれるなんて思わなかったから。

「さぁな」
彼の答えはあっさりとしていて曖昧な返事だ。
彼の言葉には深い意味が隠されているようにも思えるけれど、何を考えているのか分からない。
でも、それが彼の不器用な優しさなのかもしれないとも思った。

「…ありがとう、彗」

今日で彗に感謝を伝えたのは何度目だろうか。
静かな夜の中で、私は少しだけ素直になれたように思う。
誰かにこの気持ちを伝えたのは初めてで、少しだけ心が軽くなった気がした。