「じゃあ俺からも聞くけど…なんで、想乃はずっと笑ってんの?」
かけられた言葉に少しドキッとする。なんで笑っているのか。なんで私は、笑顔の仮面をつけるようになったのだろうか。
少し考えてから私は答えを出した。

「そうしてれば、なにも起きないかなって」
笑顔を貼り付けていれば誰かに嫌われずにすむと思ったから。家のように人が怒ったり、悲しんだりしなくてすむと思うからだ。

「それで?結果なんも起きてないの?」
「っ…!」
彗に言われたことに何も言い返せなくなってしまう。
私はりのんに嫌われてしまったし、宙くんの事だって未だになにも分かってない。友達の唯のことですら私はきっと一部しか知らないんだろう。
私は…家でも学校でも結局なに一つ上手くなんていってない。

「でもそうしてないと…私は…」
「そんなもん、壊せばいい」

私の言葉を遮るように言う彗が言い放つ。
その強い口調に思わず「え…?」と声が漏れる。

「笑いたい時に笑って泣きたい時に泣けばいい。自分を閉じ込めるものなんて全部壊せよ、相手がなに考えてようと、勝手に踏み込んでけよ」

冷静でありながらも強く響く彼の言葉は、一見無茶苦茶だ。でも不思議と私には優しい言葉のように感じられた。
仮面を壊す。自分の仮面も、相手の仮面も。そんなことがそもそもできるのだろうか。