一段落ついて皆よりも一足遅く唯と一緒にホテルに戻ると、私はさっきの出来事を思い出していた。
りのんが、宙くんのことを前から好きだなんて知らなかった。彼女のことを…ひどい人だと思う。
宙くんとの会話の為だけに人を利用したり、今朝の席の件だってあまりにも自己中だと思った。

でも、今日話した彼女の仮面に嘘はなかった。本当に…宙くんの事が好きなんだ。

『__あんたには分からないのよ、宙がどう思ってるかなんて!』

私には仮面が見えるのに、相手の気持ちを分かってあげられるはずなのに…どうして私はいつもこうなんだろう。相手の感情が分かってもその裏にあるものが何かを私は読み取れない。

いつも仮面に頼ってばかりの私自身は結局空っぽだ。

「想乃ー!お風呂上がったよ」
「あぁ…うん、ありがとう入ってくるね」
唯の言葉に曖昧に頷くも、私の意識は他のことに向けられていた。
その日は夜になっても眠気が訪れる気配はなさそうだった。隣にいる唯がぐっすり眠っているのを確認して、外の空気を吸いに行くことにする。
屋外に出ると思っていたよりも外には涼しげな風が吹いていて、空を見上げるといくつもの星が浮かんでいた。静かで安心感のあるこの雰囲気に少し心が和らぐ。
ベンチに座りながらのんびりしていると後ろからざっざっと足音が聞こえてきた。

「…?!」
肝試しのせいもあってか、少し恐怖感を抱く。
おそるおそる後ろを振り返ってみるとそこには馴染みのある顔の人物が立っていた。