その後も私たちは神社に行きおみくじをしたり、お参りをしてきたりと修学旅行を満喫していた。
りのんの事が少し気になっていたけれど、思っていたよりも彼女は私のことを気にしていないようでむしろ意識は宙くんに向いているようだった。

「もうこんな時間だね!想乃しってる?今日の夜は_」

唯が何かを言いかけたところで、「そろそろホテル向かうよー」という先生の声が響いて話が中断されてしまう。
さっきの話が気になって、唯に続きを聞こうとするも彼女はもう先生のそばに行ってしまっていて、何か楽しそうに話している。
近付くタイミングを逃してしまい、その場で立ち尽くしてしまう。

代わりに、隣にいた彗に尋ねることにする。
「ねえ、彗。今日の夜って何かあるの?」
何気なく聞いたつもりだったが、彗は少し考えるような表情を浮かべたあと、口を開いた。

「あぁ、肝試しやるらしいよ。けっこうガチのやつで、暗い森の中を歩いていくんだってさ」

「早く帰って寝たいんだけどな」と呟いてあくびをする彼の隣でその説明に少し驚いてしまう。
肝試しなんてまったく予想していなかった。概ね私がバスの中で眠っている間に説明があったんだろう。

「そんなのあるんだね…ま、まあ楽しそうだけど」
内心少し怖さを感じながらも、修学旅行ならではの特別な体験に胸が高鳴る。肝試しなんていつぶりだろうか。

「想乃、怖がりそうだもんな」
「肝試しなんかで怖がんないよ…!」
彗がクスリと笑いながら言う。その顔を見て少しムッとしながらも彼の笑顔に安心感を覚える自分がいた。
いつもあまり笑わない彼が、最近は笑う数が少しだけ増えたように思う。

そんなことを考えているとふと疑問が浮かんだ。
「それより肝試しって班とかで行くのかな?」
「あー…くじ引きで決めたペアで行くってさ」

彗から放たれた言葉にやっぱりそうか…と少し落胆する。自分達で決められるなら唯と一緒がいいなと考えていたけれど、肝試しといえばくじ引きが定番だろう。予想はしていたもののあんまり話したことない人だったらどうしようと内心ヒヤヒヤしてしまう。