「おはよう…」
「おは…って想乃の目に隈が!どうしたの寝不足?」

結局昨日はずっと浅い眠りにうなされてろくに寝れなかったのだ。朝起きた時に自分でもひどい隈だとは分かっていたけれど隠す時間もなくて唯に心配されてしまった。
「はは…修学旅行が楽しみで眠れなくて」
我ながらしょうもないと思う言い訳に「小学生の遠足じゃないんだから!」と笑って返してくれる唯には感謝だ。

学校に着くと既に彗と宙くんはバスの中に乗っている。私達も近くの席に座ろうと歩いていくと彗とばっちり目が合ってしまう。

「…っふ、なにその顔」
どうせ言われるだろうと分かっていたけれど鼻で笑われると少しイラッとくる。そのやりとりに気付いたのか彗の隣にいる宙くんにも声をかけられる。

「わ…想乃ちゃん大丈夫?眠いならバスの中で寝てもいいからね」

「っ!ありがとう、大丈夫だよ。昨日たまたま寝付けなくて」

彗との高低差につい目を見開いてしまう。なんて優しい人なんだろうか。仮面を見ても心配の表情が浮かんでいて嘘偽りない言葉だと分かる。
そんな彼を見ているとつい彗の方をじろっと睨む。

「宙くんの優しさを彗も見習った方がいいよ!」

ふんっと顔を背けて私は席に座る。そんな私の言葉に対して「俺への態度も見習った方がいいね」と返されてしまう。
なんだか先程より不機嫌そうな彼に私の方が怒りたいのに…と思うが寝不足の頭では何も言い返す言葉が見当たらない。

「もう、想乃って彗くんにだけこうなんだから」
ニヤニヤとした表情を浮かべてわざと茶化すように言う唯に「そういうんじゃないって…」と返す。
なんだかんだ昨日の憂鬱な気持ちが嘘かのようにわちゃわちゃと話していると、それはある一人の声によって遮られた。