クラス全体を一通り見回してみる。

男子で私が強いて関わりが多いと思うのは宙くん。
バスケットボールが私の顔面にぶつかった時にいち早く心配してくれていた人だ。
学級委員という事もありクラスの皆と接する事も多い彼にはよく助けられている。

黒板を消すのが届かず苦戦していた時に「手伝うよ」とスマートに対応してくれたり、先生に頼まれて書類を運んでいる時にわざわざ半分持ってくれたり。
これは決して私にだけ…とかではない。皆に平等に優しいのだ。少し色素の薄い茶髪は軽くセットされていてなんだかふわふわした大型犬みたいだ。
ルックスも性格もまさに正統派イケメンな彼を好きになる女子は少なくない。

この学年でモテているのが誰かと言われたら彗か宙くんかどちらかで競うのだろう。

宙くん…他の女子が誘いそう。それにバスケの時にも思ったけれどやっぱり少し怖い。

ちらりと彗と宙くんが話している姿を見る。

「…もんな、どうする?」
「んー別に何でも…」
会話はここからだとはっきり聞こえないけれど宙くんの仮面をよく見ると少しの不満と怒りを浮かべていた。
たまにある光景だ。きっと彼にもなんらかのストレスがあるのだろう。
けれどその原因が一切分からないのだ。
何の綻びもない彼のその仮面に隠された怒りや不満が何を表しているのか分からない。

色んな人を見てきた。笑顔なのに実際はずっとイライラしているなんて事もよくあることだ。
皆が知らないだけで…きっと誰しもが何かを抱えているのだろう。