「ひゃっ!!」
驚いて後ろを振り向くとなんとそこには彗がいた。何でいつも彼は後ろにいて私を驚かしてくるんだ。

「ふぁ…はよ。はい、あげる」
目を擦りながらふわっと欠伸をしながら眠たげに瞬きをする彼は何だか猫のようだ。
先程私の首筋にあててきたものの正体はどうやらスポーツ飲料のようだ。

「えっ…ありがとう、いいの?」
「うん。間違えてさっき押しちゃったからあげる」

そう言う彼もよく見ると額に汗をかいていて暑そうだ。それに間違えたなら自分の分も買えばいいのに…と分かりやすい彼の言葉に何だか申し訳なささえ感じてしまう。

その時ふとある物があったことを思い出した。
「これ、使う?」
私が鞄から出したものはいわゆる手持ち扇風機だ。風自体はそんなに強くないが少しは暑さも減るだろう。

「いいね。何これ俺もほしい」と言いながら涼しそうに目を細めている彼は何だかやっぱり猫みたいだ。

「そういえばいつもこの時間に家でてるの?」
「ん、後ろからよく見かける。篠原と一緒にいるとこ」

しのはら…篠原。唯のことか。
何だか彼が唯の事を話すのは新鮮な気分だ。それにしても後ろを歩いていたなんて全く気付きもしていなかった。
元々私は彗を毛嫌いしていたし気付かないのも仕方ない…今も仮面が変わらない事だけは不思議に思っているけれど。