彗に着いていっていくと思っていたよりもすぐに家に着いた。家の中に入ろうと思った矢先ふと親御さんががいるのではと考える。

「ねぇ、お母さんとかお父さんとかいないの?急に来てびっくりされるんじゃ…」
さっきまでは何となく勢いで来てしまったがほんの少し不安になる。

「…うち親いないから。今は多分どこにも行ってなきゃばぁちゃんがいる」

彼の言葉に言葉が詰まる。親がいない。幼い頃になくしてしまったのだろうか。
「ご、ごめん!私…」
「いや何も言ってなかったし。別に何とも思ってないから」

そういう彼は本当に何も思っていなさそうで、仮面を見ると先程の笑みは一切見えなく無表情で閉ざされていた。
「ばぁちゃんー、ノノいたぞ」

「おぉ…よかったよかった。あら?お友達かねぇ、いらっしゃい」
家にはいると優しそうなおばあちゃんがでてくる。暖かい雰囲気がすぐに伝わってきた。仮面もふわふわと黄色を表していて優しい表情を浮かべている。

「お邪魔します!えっとあの…」
猫を見に来ましたなんて言ったらおかしいし友達と言っていいのかも分からず戸惑っていると「上の階に猫いるから」と本人はスタスタと行ってしまった。

「もうあの子ったらねぇ、ごめんね…ああ見えて良い子だからね仲良くしてやっておくれ」

「いやいや!そんな滅相もないですよ」
精一杯の笑みを浮かべて返事をする。
何だか彗とは全然違う雰囲気の人だと感じる、でも口調から察するにお互い仲はいいんだろうなぁと思った。

「いいなぁ…」
つい階段をのぼっている途中に言葉が溢れる。もし、こんな暖かい家にいつも帰ってこられるのなら。
そんな叶いもしない幻想を抱いて私は彗くんの元へと向かった。